その手で触ってもらうのが好きだった
その声で呼んでもらうのが好きだった
その顔で微笑んでくれるのが好きだった
全部
全部
貴方だから好きだった
貴方だから大好きだった
「桔梗の手は綺麗だねー」
「そうですか?」
自分の手をまじまじと見つめて不思議そうに考え込む桔梗の顔も綺麗
そんな綺麗な桔梗が大好きで、見ているだけで幸せな気持ちになる
「桔梗は綺麗だね」
「褒めても何も出ませんよ」
「事実だから仕方ないよ」
「は時々おかしなことを言いますね」
苦笑を浮かべながら私の隣に腰を下ろして頭を撫でてくれる
ああ、こんな優しいところも好き。大好き
この気持ちに終わりなんてあるのか、まだまだ底が見えないくらいに溢れ出す
何でこんなに好きなのか、何処が好きなのか、不意に考えたくなって思考を巡らせる
頭を撫でてくれる桔梗の手が好き
キラキラして綺麗な桔梗目が好き
私の欲しい言葉をくれる桔梗の口が好き
きちんと手入れされてサラサラしてる桔梗の髪が好き
挙げても挙げてもキリがないくらいに好きなところしか見つからない
それを桔梗に伝えてみれば、やっぱり優しく微笑んでくれる
「は本当に好きだらけなんですね」
「だって本当のことだし」
「ありがとうございます」
表情は変わってない筈なのに喜んでいるのが雰囲気で感じ取れた
きっと他の人は気付かない僅かな変化も感じられるようになったのは
一緒にいる時間がそれだけ長い証拠で、それを自覚してまた愛しさが込み上げてくる
「あのね、桔梗の表情も好きなんだよ!」
「どんな表情ですか?」
「笑顔も好き。真面目な顔も好き。悲しそうな顔も好き」
「また好きだらけですよ」
そう言って呆れているような声色の桔梗すら愛しくて大好きで
こんなに好きなんて私は、ある種の病気かもしれないとぼんやり考えてみる
それだけ桔梗は魅力の塊みたいな存在で、私にとっては特別なんだけど
「は好きなものが沢山ありますね」
「違うよ」
「では、何ですか?」
私の否定的な言葉に少し驚いた様子で質問を投げ掛けてくる桔梗の顔は酷く真剣で
やっぱりそんな顔も大好きで愛しくて
思わず抱き付いてみればいつもの笑い声と愛しそうに撫でてくれる綺麗な手が私の感覚を支配していく
「全部好きなのは桔梗だからだよ」
「そうですか」
「桔梗だから好きなの」
「なるほど。では、私も」
「桔梗も?」
「だから全て愛しいということになりますね」
そう言って、いつも以上に優しい顔で微笑む桔梗の笑顔が本当に愛しくて
やっぱり私はこの人の全てに囚われているのかもしれないなんて
他人事のようにぼんやりと考えてみた
(桔梗だいすき!)
(私もですよ)
(嬉しいです!ハハン!)
(ハハン。それ、使い方を間違えていますよ)