隣から感じる妙な視線に気付かないフリをしてスクアーロは盛大に溜息を吐いた
先刻から何度もその視線を感じていたが、確実に面倒事に巻き込まれる…
確信は無かったけど、今までの経験からスクアーロにはそれが嫌と言うほど理解出来た
だからその視線を無視して仕事をしていた…筈だったのに
「スクアーロ!スクアーロ!スクアーロ!」
「うるせえぞぉ!!!言いたいことがあるなら早く言いやがれぇ!!!
自分の名前を連呼すると机を叩く音に耐え切れなかったスクアーロの怒号が部屋に響く
我に返ったときには、それを待ってましたと言わんばかりのキラキラした目
自分の短気っぷりを後悔した時には既に遅かったようで、また盛大な溜息を吐く
「お誕生日だからボスに休暇貰ってきたよ!」
気が利くでしょ?なんて自慢げに言っているが、その無理矢理奪った休暇のツケを払うのは確実に自分で
明日になれば更に倍以上の仕事が押し寄せてくることを考えてスクアーロは頭が痛くなる思いがした
「何勝手なことしてやがる…」
「さあ、休日を満喫しよう!」
勝手に話を進めるから逃れる術が無いことを嫌というほど理解しているので
スクアーロはその話に半ば無理矢理乗せられることになった
「…で?満喫って何するんだぁ?」
「ノープランなので、スクアーロ先生に丸投げします」
あっけらかんと答えるに頭の中でブチッという何かが切れるような音がした
しかし、そんなの眩しい笑顔にスクアーロは喉まで出掛っていた抗議の言葉を飲み込んで自分の休日プランを考えてみる
惚れた弱みとは恐ろしいものだと、少しだけ自分が恨めしく思えた
考えた結果いくつか候補が挙がったので、休日の過ごし方を提案してみれば
武器の手入れと言えば却下の一言
アーロの世話と言ってみれば却下の一言
部屋の掃除と言えば却下の一言
次の任務先の下見と言えば却下の一言
「ゔぉ゙ぉい!!!さっきから却下しか言ってないじゃねえかぁ!!!」
却下の一言で自分の意見を全否定されて、先刻以上の怒号が部屋に響いた
怒号を受け取ったは不満そうに頬を膨らませる
スクアーロはその姿を確認して、勢い任せに振り上げていた両手を下ろして溜息を吐く
「俺の休日なんだから好きにさせろぉ…」
「せっかくの誕生日で休日なんだから特別なことしたいじゃない!」
最もらしいことを言っているようなの顔を見て、思わず言葉に詰まる
自分の休日に好きなことをして何が悪いのか、大体その休みだって強制的に奪われたものであって自分が望んだ休暇ではない…
色々と文句を言ってやりたかったが、結局目の前にいる彼女には何を言っても無駄なので
もう何度目になるのか分からなくなった溜息を盛大に吐き出し、この状況を打破する言葉を探す
「別に特別なことなんかしなくていいだろぉ…」
「それじゃあ、誕生日にならないじゃない」
不満を言いながら不貞腐れるの頭をわしゃわしゃと音がするほどに撫でてみれば
ぼさぼさになった髪の隙間から抗議の声が聞こえてきた
スクアーロはその声を発する口に用意していたクッキーを押し込んでみる
最初は抗議の声をあげていたもクッキーによって機嫌が良くなったのか、差し出されるがままにクッキーを消費していく
「…おいひ…」
「マヌケ面で何言ってやがる…」
「だって…ふふあーろ…!」
「お前がいるだけで十分だぁ…」
何のことかと首を傾げるから視線を逸らしているスクアーロの頬が少し赤いことに気付いたのか
クッキーを飲み込んだ途端に、そんな彼に対して愛しさが込み上げる
上機嫌になったが思わずその背中にダイブしてみれば
受身の態勢が整っていなかった背中に思いきり突撃して屋敷中に奇妙な泣き声が響き渡った
(痛い痛い痛い!)
(泣くなって言ってるだろぉ!)
(スクアーロが酷いことしたー!)
(誤解を招く言い方するんじゃねぇ!!!)